サンクリの町のはずれの教会の先の市場の奥の小道をさらに左に曲がって結構進んだところに、チャムラ行きのコレクティーボの乗り場がある。誰かに細かく説明してもらったところで結局わからなかっただろう。そんな時は誰かに聞けばいい。「チャムラー、コレクティーボ」って言ってれば、誰かが指差してくれる。
そういえば、宿の親切なメキシコ人にチャムラについて聞いた時、あそこには何もない、行ってもつまらないよ、と言われた。人の価値観なんて様々なので、真に受けて行くのやめなくてよかったと後で思った。
前回まではこちら↓

クネクネとした山道を猛スピードで進んでゆく。30分くらい走ると、人だかりが見えてきた。
チャムラ村に到着




野菜がフルーツが売られていたり、雑貨や民芸品も売られている。人も多く賑やかなサンデーマーケット。
でもよく見ると、女性はみんな羊毛を黒く染めたスカートを履いている。



教会の中ので行われていること
街の広場の中心にはサンファンチャムラのシンボル的なサン・ファン・バティスタ教会がある。漆喰の白い壁に、緑のアーチが映える。ポップな色彩と可愛らしい模様が描かれていて、お菓子の家のようだ。
全く知識のないまま、誘われるがままにノコノコと付いてきた私。促されるまま入場料を払って中に入ろうとすると、扉の前で羊毛のベストを着た男性に止められた。
スペイン語と英語どちらがいいか?と聞かれた上で、中では絶対に撮影禁止で、写真もビデオも絶対に撮るな、Are you Understand?と何度も念を押された。
ずいぶん厳重なんだな、なんて思いながら扉の奥へ進むと、そこには想像を超える世界が広がっていた。

ここからは、想像していただきたい。
扉の中を開けると、薄暗い建物の中一面、煙で曇っていた。炊かれたセージと蝋燭の煙が立ち込めているのだ。煙の中で壁、床、祭壇、1万本はあろうかという無数の蝋燭の火が揺れている。窓はないので外の光は一切入ってこないのだが、蝋燭の光でそこそこ明るい。天井は高く、両サイドや正面の祭壇には、ガラスケースに入ったこの村で崇められているサン・ファンの等身大の像が何百体も飾られている。教会に良くある椅子は一切なく、床一面に松の葉がフカフカに敷き詰められている。壁にも松の枝が立てかけられていて、さながら森のようだ。
人々は、女性は黒い毛のスカートを履いて、男性は黒や白の毛のベストを着て、床に直接膝を崩して座り、話したりお祈りをしている。緑の草の上に羊の毛を纏った人々が戯れる光景はさながら動物を模しているように見える。人々の前には直接床に立てて何本もの蝋燭と、ペプシやコーラ(聖水らしい)が置かれていて、祈祷師がお祈りしている間、頭を床に伏せている人もいる。祈祷師の声やおしゃべりの声が響く中、ずっと単音のオルゴール調の音で『真っ赤なお鼻のトナカイさん』が流れていた。
・
・
・
しばし呆然と、その光景を目の当たりにし、外に出ると、S君がシャーマンに個別に祈祷してもらうという。もし良ければビデオで撮影してほしいと言われ、面白そうなので快諾した。
ところが、シャーマンを呼んでもらって話を聞いて見ると、祈祷代とは別にお金を払えば写真は撮ってはいいけどビデオはダメだという。youtubeにあげる為、ビデオが撮れないと意味がないと思ったらしく断念する。
チャムラ村は、呪術教会やシャーマンなど、世界的にも珍しいカトリックと土着の信仰が合わさった独自な文化が有名な観光地らしいのだけど、ティアンギスに売られている羊毛を使った雑貨なども、他の街では見られない珍しいものばかりで見応えがあった。チャムラで購入したものは秋冬に販売する予定。
サンクリに戻ってからは、常設市場をぶらぶらしたり、教会の近くのメルカドを周ったり、マヤのテキスタイル博物館に行ったりした。博物館は、刺繍の展示が素晴らしく、メキシコ南部からグアテマラのマヤ民族のそれぞれの村のウィピルの刺繍が見れた。
自分一人だった3日かかりそうな行程を(かかりすぎ!)、S君のおかげで一日で回れてしまった。サンクリから山にトレッキングに行ったり、パレンケ遺跡に行ったり、他にもアクティビティがいっぱいだ。なにより、何もしなくても居れる心地よさがあったので、サンクリにはもっといたかった。後ろ髪を引かれつつも、次の街に移動した。
#5に続く

Trophy(Gathering)はオンラインショップです。